「争族」を防ぐための遺言書の話

「うちは仲がいいから大丈夫」とは限らない

相続の話をしていて、こんな言葉を耳にすることはありませんか?
「兄弟仲は悪くないから、親の相続が起きても問題ないよね」

確かに、普段の関係が良好なら、もめるなんて想像もしにくいものです。
ですが、実際の現場では仲のいい家族ほど対策をしていないというケースが多く、結果的に相続の場面でトラブルになることも少なくありません。

たとえば、
「兄弟の一人は生前に多額の贈与を受けていた」
「遺産の大半が不動産で、平等に分ける方法で意見が食い違った」
こうしたことがきっかけで、いつの間にか「話し合い」が「言い争い」になってしまうのです。
いわゆる「争族」と呼ばれる状態です。

トラブルを防ぐカギは「遺言書」

こうしたトラブルを防ぐために有効な方法の一つが、親の生前に遺言書を作成しておくことです。
遺言書があれば、兄弟間で遺産分割の話し合いをする必要がなくなります。
つまり、トラブルの火種になりやすい「話し合いの場」そのものをなくすことができるのです。

ただし、注意したいのは、不公平感を残す内容にしないこと。
どんなに法的に有効でも、「自分だけ損をしている」と感じる内容であれば、遺言書がきっかけで不満が噴き出すこともあります。

遺言書は「書けば安心」ではない

遺言書があると、当事者間で遺産分割をしなくても遺産を分けられるということはご存知かと思います。
でも、意外に知られていませんが、遺言書も絶対ではありません。
相続人全員が同意すれば、遺言書の内容に沿わない遺産分割協議を行うことも可能です。

つまり、内容に納得できない相続人がいれば、せっかくの遺言書も意味を失ってしまうことがあるのです。

もめない遺言書をつくるために

大切なのは、遺言書を作る前に家族で相続について話し合っておくこと。
その上で、必要に応じて専門家のアドバイスを受けながら、家族全員が納得できる形に整えていくことが理想です。

相続は、単なる財産の問題ではなく、家族の信頼関係を守るための問題でもあります。
「うちは大丈夫」と思っている今こそ、将来の安心を備えておく。
それが、争族を未然に防ぐための最強の予防策なのです。

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